5月18日 SBI3プレナリー3日目

昨夜(日本時間)のSBI3プレナリーに続いて、能力養成(Capacity-building), 科学技術協力(technical and scientific cooperation), 技術移転(technology transfer), 知識管理(knowledge management), およびコミュニケーション(communication)(議題7)が、2021年5月18日(火)の夜8時から始まりした。

能力養成(Capacity-building), 科学技術協力(technical and scientific cooperation), 技術移転(technology transfer), 知識管理(knowledge management), およびコミュニケーション(communication)(議題7)

以下、テーマが、ポスト2020枠組みの実施にとって必要不可欠なものとの認識は、ほぼ全ての加盟国が強調しますが、アプローチについては、声明の段階では意見に隔たりがあるように思います。

能力要請

この議題は、途上国中心に意欲的な支援の仕組みがないと、意欲的な目標設定や実施も社会改革(Transformative Change)も実現し得ないという主張のもと、取組の強化を求める声が途上国から上がりました。

生物多様性条約では、COP10で生物多様性日本基金を日本が資金提供し、COP10の成果としての世界目標達成のための能力要請を支援するというスキームが生まれてから、より具体化したテーマです。2016年に、より体型的な能力要請が必要という観点から、短期行動計画がCOP13で採択されたのですが、急いで数多くのワークショップをこなし、フォローアップが十分でないことや、成果が評価しづらい点や、政治的に交渉の中で能力要請計画を定めたことから、支援機関とのコミュニケーションが十分に取れない中で合意されたことで生じたことで十分な支援が得られなかったという課題がありました。

そこで、ポスト2020枠組みの合意形成と同時に長期的な能力要請計画を考えていく案が俎上に登っています。

意見としては、
能力要請のプログラムが必要なテーマ(主流化、ジェンダー主流化など新しいテーマを指摘する国があるほか、メジャーグループからはユースやジェンダー、社会改革を進める教育Transformative Education、遺伝子組み換え生物管理や外来種、保護地域管理やABS議定書など従来から必要性が指摘されているテーマ)
能力要請プログラムを提供する主体(事務局がプログラムを提供するのではなく、外部の専門機関に委託し、事務局は報告やフォローアップなどに集中した方が良いとする意見が先進国には多かった印象)
能力要請プログラムの受益者(途上国の行政官だけでなく、より多くの関係者の能力要請機会の確保といった意見。メジャーグループからは、先住民地域共同体やユース、ジェンダーグループなども参加の重要性が指摘されました。)
能力要請に関する資金支援についての強いメッセージの発出の必要性
などが出されました。

科学技術協力

途上国のニーズと先進国や支援機関/民間団体ののシーズをマッチングする仕組みが必要として、その運営に助言を及ぼす非公式助言グループ(Informal Advisory Group)の設立や、新しい機関/プラットフォームの可能性について検討されました。

新しい機関(サポートセンター)については、地球規模で科学技術協力や技術移転を進める選択肢と、地域ごとに、サポートセンターを作る選択肢が示されていたのですが、既存の支援の仕組みとの棲み分け(新規の仕組み構築に慎重な案)も含めて、新たな選択肢も出てきて、意見の差が大きいように感じます。

技術協力についても、集中あるいは優先すべきテーマについて様々な意見が出されました。外来種、遺伝子組み換え技術やそのリスク管理、などの意見が比較的多かったような印象です。

また、生物多様性に関する科学技術への投資や、既存のモニタリングや情報共有の仕組みへの継続的な支援とシナジーが必要という意見もオブザーバーから出ました。

コミュニケーションについても、「普及啓発」にとどまらず、より効果的で戦略的なコミュニケーションの推進や、国内レベルのコミュニケーション強化について求める意見が出ました。

この議題について、コンタクトグループの設立を宣言。議題の一部は、名古屋議定書キャパビルや知識マネジメント、コミュニケーションはCRPを作成されることが紹介されました。

議題9 実施の報告、評価検討(Assessment and Review)

この議題は、定期的な実施状況の報告や、各国の報告の取りまとめ、取りまとめた上で必要に応じて追加的な行動を呼び起こすための手法を考えることの重要性が、過去の10年の経験からわかっており、報告だらけになってはいけないですが、計画する国別報告書や、評価と意思決定を行うCOPの開催予定などを睨みながら、今後10年のプランをまとめていくことになります。また、追加的な行動や、政府による行動を補完する、非政府組織による貢献(Non State Actor Commitment)のあり方なども考えられています。

少し意見が分かれているのは、ポスト2020枠組みの合意と国家戦略設定の方法についてです。理想では、ポスト2020枠組みが採択されたあと、各国は「それに基づく」目標設定を通じて、世界レベルの目標達成を目指す必要があるのですが、例えば法律などの理由で、2015-2025年の国家戦略をすでに樹立してしまって、改訂が難しいという国があった場合どうするか、という技術的なことが話されています。そのアプローチとして、National ContributionやNational Commitmentという仕組みが検討されています(パリ協定の仕組みにも着想を得た手法です)

生物多様性条約の報告だけでなく、他の環境条約でも求められる報告制度と重複したり、報告作業の負荷を与えすぎるべきでないという意見も出ました。

National ContributionやNational Commitmentという仕組みは、生物多様性条約第6条(a)に定められる各国が生物多様性国家戦略を義務を、弱める仕組みになるのではないか、そのため、屋上屋を重ねる形になるとして否定的な見方を示す途上国と、協力者や支援を増やす仕組みとして可能性を感じ、OEWG3で目標設定とパッケージで検討するべきで様々な意見や立場や論点をSBIで整理するべきとの意見が分かれているように思います。

先住民やユースは、あらゆる社会が関わる実施手法(Whole Society Approach)の重要性を指摘し、ユースや女性、先住民地域共同体の参加の機会を求めました。

この議題についてもコンタクトグループの設立が宣言されました。

 道家哲平(IUCN-J事務局長/日本自然保護協会)