9月1日 ポスト2020枠組み作業部会 CG2とCG3

2021年9月1日20時(日本時間)より、CG2(目標1~8)とCG3(目標9-13)が行われました。CG2では、目標3から5についての意見出しを行い、CG3では、目標9から11までの意見出しが行われました。CG2は、時間が足りないことから、追加でもう1回開催することを検討するとし、その会議の前に、進行を早めるために事前に意見提出を参加者(国)に求めました。CG3は、本日が第1回目で、明日も開催予定です。

 

WWF主催:ポスト2020枠組み検討ワークショップ(2018年7月@モントリオール)

WWF主催:ポスト2020枠組み検討ワークショップ(2018年7月@モントリオール)

CG2 目標1~8

目標3 保護地域(ファーストドラフト)

Ensure that at least 30 per cent globally of land areas and of sea areas, especially areas of particular importance for biodiversity and its contributions to people, are conserved through effectively and equitably managed, ecologically representative and well-connected systems of protected areas and other effective area-based conservation measures, and integrated into the wider landscapes and seascapes.

陸地と海域の少なくとも30%、特に生物多様性とその人間への寄与上特に重要な地域が、効果的かつ衡平に管理され、生態学的に代表的でよく連結された保護区のシステムと、その他の効果的な地域ベースの保全手段によって保全され、より広いランドスケープとシースケープに統合される。

 

意見としては、land とseaがわかりにくいため、terristrial&marineとする、freshwater(淡水)を加える意見、保護地域化すべき場所をしてする、「特に~」からの表記として、NcPではなくエコシステムサービスとしたい、Key Biodiversity Areaへの言及、文化的社会的に重要な場所などのバリエーションが有りました。保護地域面積を30から20%にするという意見もありましたが、非常に少数で、多くの国が30%を主張しましたが、意欲度やどのように達成するかを深めるため、一旦[ ](ブラケット)をかけたいとする意見も出ました。

保護地域の面積目標の捉え方は、少々意見が別れ、各国で30%という意見と、地球規模で30%とする意見両方が見られました。

また、管理の質に当たる、「効果的、衡平」に加え、適切に資金提供された(adequatly funded)という表現を入れるべきという意見もありました。

多くの意見として、先住民地域共同体の権利尊重などの文言(国によって様々なバージョンがある)を入れたいとする意見も多くありました。

目標4 種の保全や野生動物コンフリクト対策(ファーストドラフト)

Ensure active management actions to enable the recovery and conservation of species and the genetic diversity of wild and domesticated species, including through ex situ conservation, and effectively manage human-wildlife interactions to avoid or reduce human-wildlife conflict.

生息域外保全を含め、野生種と家畜種の種多様性や遺伝的多様性の回復と保全を可能にする積極的な管理活動を行い、人間と野生動物の衝突を回避または軽減するために、人間と野生動物の相互作用を効果的に管理する。

 

意見としては、積極的な管理の対象を、絶滅危惧種・優先種・固有種・重要な家畜種など様々なバリエーションが提案されました。また、管理に含まれるものとして、生息域外保全だけに言及する原案に加えて、生息域内保全(In-stu)を何らかの形で入れる意見が何パターンかで提案されています。

獣害などのような人と野生動物との衝突(コンフリクト)については、表現がネガティブなので、共生の強化といったポジティブな意見が出されたり、様々な表現が各国から出されました。また、ワンヘルスアプローチをこの目標で言及する提案(野生動物の衝突を減らすことで「野生動物から人への病気の移動を防ぐ」といった文言)もありましたが、目標5でワンヘルスアプローチに言及する案があり、少し整理が必要な目標と感じました。

また、この目標を拡張して、重要な家畜や品種の保全などの目標として修正するアプローチを提案する意見も見られました。

ここでも先住民地域共同体の尊重の文言が複数パターンで提案されています。

目標5 持続可能な利用(ファーストドラフト)

Ensure that the harvesting, trade and use of wild species is sustainable, legal, and safe for human health.

野生種の捕獲、取引、利用が、持続可能で、合法的で、人間の健康にとって安全であることを確認する。

 

意見としては、数的要素を入れるために、「あらゆる(all)」という表記を入れる案、先住民地域共同体の慣習的利用についての言及を入れる案、違法な利用の撲滅という表現、ワンヘルスアプローチへの言及を提案する意見などが見られました。

CG3 (目標9から13)

目標9 共有サービスの確保

Ensure benefits, including nutrition, food security, medicines, and livelihoods for people especially for the most vulnerable through sustainable management of wild terrestrial, freshwater and marine species and protecting customary sustainable use by indigenous peoples and local communities.

陸上、淡水、海洋の野生種の持続可能な管理や、先住民や地域社会による慣習的な持続可能な利用を保護することにより、栄養、食料安全保障、医薬品、生計などの恩恵を、人々、特に最も弱い立場にある人々に提供する。

意見としては、慣習的利用(条約10条(c))に関するグローバルプランへの言及を提案する意見や、野生動物の持続可能な利用を通じてを保全や回復などの手法にも言及する意見、ベネフィットの例示に、要素を追加する案と、限定的にしないために、削除する意見と両方が見られました。

一方、持続可能な利用をすすめる、目標5との重複感をどう解消するかについて意見がだされ、目標5と目標9を合体させる提案もありました

目標10 第1次産業の持続可能性

Ensure all areas under agriculture, aquaculture and forestry are managed sustainably, in particular through the conservation and sustainable use of biodiversity, increasing the productivity and resilience of these production systems.

農業、養殖業、林業のすべての地域が、特に生物多様性の保全と持続可能な利用を通じて、持続的に管理され、これらの生産システムの生産性とレジリエンスが向上するようにする。

意見としては、実現可能性の支店からあらゆる地域(all)を50%にする提案がありました。水産業(aquaculture)か漁業(fisheries) 農林水産業に加えて、他の利用(other use)を入れる提案もありまたし、農業を農業生態系とする案や、もっと大きな提案としては、生産地域(Productive area)に拡張するアイディアもでました。

ポリネーター保全への言及や土壌栄養状態の回復などへの言及もありました。持続可能な利用が広すぎるため、良い実践、認証などの具体例をしめすという工夫、ユニークなものとしては、小規模農家や伝統的農法・IPLCの慣行、農業生態系実践へのポジティブな言及もありました。

目標として、生産性(productivity)を設定するのは難しく、レジリエンスの向上などに絞りたいという意見がある一方、生産だけではなく、食料システム(流通や収穫後の廃棄)などかなり目標の狙いを大きく拡張する提案もありました。

また、モノカルチャーなどの悪影響をもたらすものを減少させるといった既存の目標を反対側から表現する案もありました。

目標11 調整サービスの確保

Maintain and enhance nature’s contributions to regulation of air quality, quality and quantity of water, and protection from hazards and extreme events for all people.

すべての人々のために、大気の質、水の質と量の調整、災害や極端な自然現象からの保護に対する自然の寄与を維持・強化する。

意見としては、行動志向型の表記・数的要素を入れる視点から、NbSの記述を導入することで行動志向型になるとの意見がでましたが、他方で、NbSは多国間協定で同意されていないので、NbSの概念導入に消極的ないし否定的な意見もありました。

生態系サービスの事例として気候変動関連の言葉や、土壌の表記を追加する、人畜感染症の防止などの意見もありました。 NcPを生態系サービスにしたいするという

また、all peopleは現実的でないとして、修文する意見がありました。さらには、目標9と11を統合できるのではないかという意見もでました。

道家哲平(IUCN-J事務局長/日本自然保護協会)