ジュネーブ会合 ここまでの振り返り

3月14日から始まった生物多様性条約ジュネーブ会合は、6日間の協議を終えました。6日目は、SBIプレナリー、OEWG-CG2、SBSTAA-CG(生物多様性と健康)とSBI-CG(ジェンダーアクションプラン)を扱いました。この間、多様な議題を扱いましたので、一度振り返りたいと思います。

ポスト2020枠組みは、目次の構造・ゴール・マイルストーン・行動目標(一部次週に先送りもあり)などを扱いましたが、「過去に発言した内容は指摘しなくてよい、新しい要素、国として態度を変えたものを指摘してほしい」「ほかの国が指摘したことは繰り返さなくてよい」という進行の指摘も無駄に終わり、オンライン会合とほぼ同じ指摘が繰り返されました。オンライン会合と同じように、意見表明だけで、対話がない1週間だったと思います。

ポスト2020枠組みと、DSI、モニタリング、技術移転や能力養成、ジェンダーアクションプランなど連動する議題が複雑に絡み合ったことで、ポスト2020枠組みの議題ではないところでも、同じ意見表明が繰り返されたようにも思います。

コロナ対策のために、各国交渉官の人数を絞ったため、一人の交渉官が、朝から晩まで会議に出続け、疲労から来るいらだちも見られるなど、対面会合のメリットがまだ正式な交渉の場(プレナリー・コンタクトグループ)では見られず、対面会合の機会がまだ活かされてないように感じました。来週からは、議長・ビューロ・共同進行の采配が重要となりそうです。

*(公開後修正箇所を赤字)現地参加のNGOから、意見交換などは裏で行われ、対面会合のメリットを感じている政府団もいるとの情報があったので、赤字を追加。

ここまでの話を聞く限りで整理できる対立点は、

1.生態系サービス(Ecosystem Service) vs 自然の寄与 (Nature Contribution to People)

2.生態系に基づくアプローチ(Ecosystem-based Approach) vs 自然に根差した解決策(Nature-based Solutions)

3.資源動員に関して、まず先進国が義務を果たすべき vs あらゆるソース(公的資金と民間資金)

4.資源動員に関生物多様性に悪影響を及ぼす補助金の改革は、生物多様性の損失の劣化の原因への対策に過ぎず資源動員への約束にはならない vs 資源動員の一環になる。

「数的目標か、質的目標か」は、テーマごとに変わるためそれほど明確な対立点に現状なっていません。(そこまで議論の熟度が届いていない)

IPBESグローバルアセスメントやGBO5の指摘など、「そもそも」に立ち返る必要がありそうです。

100万種が絶滅の危機にあると言われ、ポリネーター(花粉媒介生物の危機)による農業生産性の低下、森林破壊などに起因する新興感染症の危機、IUU漁業などによる漁業資源の危機、気候変動や海洋酸性化による災害の頻度や影響の重大化や生態系(と自然の生産性)の危機に対して、現状の改善の積み重ね、バックキャスティングのどちらのアプローチが必要なのか。

IPBESグローバルアセスメントが指摘する社会変革のための介入ができているか、GBO5が指摘する「失敗の原因」と、食料システム・水・ワンヘルスアプローチなどの社会変革を導けるポスト2020枠組みを構築するにはどうするのか、といった思考で、これからの交渉の行方を追う必要がありそうです。

ネイチャーポジティブを実現しなければいけないのですが、第1週目について言えば、ポジティブ感はまだ感じられませんでした。

道家哲平

国際自然保護連合日本委員会/日本自然保護協会