NGO準備会議を行ないました。(4月29日)
日曜日ですが、SBSTTAの準備のための会合を朝から晩まで行ないました。午前中はCBDアライアンス(http://www.cbdalliance.org/)という生物多様性条約(CBD)のプロセスにもっと市民が参加しやすいように協力するためのネットワークの運営会議です。午後は、SBSTTAに向けた作戦会議を行ないました。
CBDアライアンスの運営委員(Board member)は8つの地域から選出されるかたと、COP11ホスト国、COP10議長国から構成されます。COP10議長国からは、UNDB市民ネットの今井さんが運営委員で、私がその補佐という立場で名を連ねていますが、今井さんはRIO+20のフォローアップのためにニューヨークにいるので、私が代わりに出席しました。CBDアライアンスの組織運営の話なので、詳しい話は割愛しますが、NGOの参加を促進するための世界的なネットワークを維持するのは非常に難しく、透明性、公平性、ジェンダーバランス、先進国途上国のバランス、NGO文化・仕事の仕方の異なる国同士の人たちで物事を進めるのはいつも大変です。運営委員はそれぞれに役割をにない、貢献し合いながら、自分たちだけではなく、CBDに関わるNGOあるいは関わるべきNGOの支援を行なっていますが、こういう活動にはなかなか資金が回ることがないのが現状です。助成金獲得も非常に大変!
午後は、SBSTTA(科学技術助言補助機関会合)の議題毎の主な論点、NGOの懸念事項の共有をしました(CBDアライアンスに参加している団体は比較的小規模なグループが多く、代替案を提示するというよりは、市民としての懸念をしっかり伝えること、政府の監視役のような役割に活動の重心をおくグループが多い)。今回は、SBSTTAの議題だけではなく、RIO+20に関する情報共有なども時間を割いて議論をしました。SBSTTAの主要論点は、http://bd20.jp/sbstta-16の議題解説/ に簡単にまとめています。
大きな話題となる、「海洋沿岸の生物多様性」の部分をちょっとだけ紹介したいと思います。
海洋沿岸の生物多様性は、このテーマの中で3つの議題に別れており、ざっくり説明すると、①海洋保護区を巡る議論について、②海洋沿岸地域の損失や劣化原因(海洋酸化やサンゴの白化)について、③海洋沿岸地域の特性に合わせた環境影響評価ガイドラインについてになっています。
海洋保護区は、もう少し正確に言うとspatial plan(空間計画)を検討しようという言い方になっています。海というものは言われてみれば当たり前ですが、陸地以上にもっと立体的に捉える必要があり、海底地形の物理的改変・海底・海中内での過剰漁業、(比較的浅海域での)養殖業などの営みがあります、環境影響の要因も海流/海水温/陸地からの栄養塩/土砂の供給流入と非常に幅広く複雑なシステムです。
Spatial planという言葉を導入することで、①保護地域という言葉が、もう少し幅の広い定義であるにもかかわらず「人間活動を許さない地域」のように受け取られることが多かったことへの配慮と、②持続可能性や保全に重きを置いた地域と、人が利用する地域と、研究を重視した地域など、幾つもの土地/海域利用を考える中で「保護地域のありようを検討する」ことをめざしているとも思います。
さらにいうと、生物多様性条約が海洋沿岸に対して何をどこまで検討するかという議論があります。生態学的に重要な海域(EBSAエブサと発音)を科学的な視点から「特定」することはCBDの仕事とされているのですが、そういう地域をどう管理するか(管理の枠組みを作るか)というのは国際的な仕組みがなく、CBDでもっと踏み込んで取組むべきという意見と、国連で行なうべきという綱引きがいつも行なわれます。
これ以外にも事前にCBDアライアンスに参加している団体の有志でまとめた主要論点(CBD ALLIANCE BRIEFINGS FOR SBSTTA 16 AND WGRI 4, MONTREAL, APR- MAY 2012 英語、PDF)がCBDアライアンスから出されています。ご参考までに、IUCNのSBSTTA、WGRIのポジションペーパー(意見書のようなもの)のリンクも紹介します。
さぁ、明日からSBSTTA初日です!
報告者 (財)日本自然保護協会 IUCN-J事務局主担当 道家哲平