【準備号2】SBSTTA-16の議題解説
1 科学技術助言補助機関の効率改善の方法と手段、特に生物多様性2011-2020戦略計画とその問題を焦点としたIPCES(生物多様性と生態系サービス関するに政府間科学政策プラットフォーム)との連携とオプションについて
CBD-COP10では、戦略計画(愛知ターゲット)を採択し、SBSTTAに対して、各国がこの目標の実施、あるいは実施状況をモニタリングするために必要とされるツールやガイダンス、そのための多年度計画の検討を行うために、科学的知見からの助言を提供することを指示しました。また、IPBESの運営や組織体制に応じて、CBDがこのIPBESをどのように活用できるか、SBSTTAとの役割分担などを検討することが求められています。今回のSBSTTA16では、IPBESに関する報告(4月16-21日に会合を予定)やその結果に基づき、COP11における決議案(UNEP/CBD/SBSTTA/16/2)をまとめることになります。
2 GBO(地球規模生物多様性概況):第四版の準備
地球規模生物多様性概況第3版(GBO3)は、COP10の前のSBSTTA14で発表され、戦略計画の策定の重要な情報源となる。CBD-COP10では、条約事務局に対して、GBO3準備過程を検証し、COP11前のSBSTTAに報告することを指示するとともに、地球規模生物多様性概況第4版(GBO4)の作成計画案をSBSTTAで検討することを決めた。SBSTTA16では、そのGBO3の作成プロセスに関する検討を行うとともに、GBO4の準備に関するCOP11の決議案(UNEP/CBD/SBSTTA/16/3)をまとめることになります。
3 島嶼域の生物多様性:作業プログラム実施の評価徹底
島嶼生態系に関する作業計画はCOP8(2006)にて採択され、COP9,COP10において、COP11で実施状況に関する詳細検討を行うこととなっています。条約事務局では、GBO、第4次国別報告書、関係団体や締約国からの情報提供に基づいた作業計画実施状況に関する報告書を用意し、実施の程度、島嶼生態系の状態や傾向、実施の障害、島嶼作業計画が愛知ターゲット達成に寄与するために必要な示唆などをまとめました。気候変動による影響と島嶼作業計画の対応に関しては別途報告書を用意しています。今回のSBSTTA16では、実施状況を評価するとともに、実施を妨げる障害や、愛知ターゲット達成に貢献するために作業計画の中で強化するべきポイントなどについてのCOP11決議案(UNEP/CBD/SBSTTA/16/4)をまとめることになります。
4 海洋と沿岸の生物多様性:
4.1 生態学的または生物学的に重要な海域
COP10の決議では、条約事務局に対して、生態学的または生物学的に重要な海洋地域(EBSAsエブサと発音)特定を進めるために一連の地域ワークショップを開催することを条約事務局に指示し、複数回にかけてその地域ワークショップが開かれました。条約事務局からの報告は、UNEP/CBD/SBSTTA/16/5に記載される予定です。今回のSBSTTA16では、EBSAsの詳細情報や、EBSAsの特定に関するトレーニング教材、先住民地域共同体の伝統的、科学的、技術的な知識に関する報告(UNEP/CBD/SBSTTA/16/5/Add.1)を元に、COP11における決議案をまとめることになります。
4.2 海洋と沿岸の生物多様性に及ぼす人間活動の悪影響に対処すること。(サンゴの白化、海洋酸性化、漁業、水中騒音を含む)
COP10の決議(X/29)では、サンゴ礁白化に関する行動計画(対処を進める際の障害の特定も含む)の進捗に関する報告書の準備、水中騒音の影響に関する報告の準備、海洋酸化の影響のモニターや評価のための専門家評価などを条約事務局に指示しました。それに基づき生物多様性条約事務局では数々の調査や委託研究を行いました。今回のSBSTTA16では、関連する条約事務局の報告書(UNEP/CBD/SBSTTA/16/6)を検討し、COP11に向けて必要な助言を行うことが期待されています。
4.3 海洋空間計画、海洋保護地域とするための自主的ガイドライン海洋および沿岸地域における環境アセスメントの生物多様性への配慮
COP10決議では、海洋空間計画、地域の状況に応じた管理ツールの経験や活用に関する情報をとりまとめること、影響評価について何のプロセスもないような規制のされていない活動も含め「海洋沿岸地域の環境影響評価(EIAs)や戦略的アセスメント(SEAs)の自発的ガイドライン」の開発促進および、海洋保護区に関する専門家ワークショップの開催を、条約事務局に指示した。本議題では、COP10決議に基づく事務局の取りまとめ(生物多様性に配慮した海洋沿岸に関する環境影響評価及び戦略的アセスメントに関する自発的ガイドラインを含む)をもとに、COP11における決議案(UNEP/CBD/SBSTTA/16/7/Add.1)をまとめることになります。
5 生物多様性と気候変動
5.1 生物多様性に関連するREDD + safeguards1*の応用に関するアドバイス、及びREDD+の影響を監視したり評価することが可能な指標と潜在的なメカニズム
COP10決議(X/33)では、条約事務局に対して、COP11での採択をめざしたREDD+(発展途上国における、森林伐採や劣化に伴う温暖化ガス排出削減、森林の持続可能な管理及び森林炭素貯蔵の強化の生物多様性に関する側面について助言を提供することを求めています。また、同決議にて、REDD+が条約の目的達成にどのように貢献するかを測る指標案について検討すること、REDD+の生物多様性の今日をモニターするメカニズム案の評価を求めています。本決議に基づき、条約事務局は4回のワークショップを実施し、報告書をまとめている(UNEP/CBD/SBSTTA/16/8)。今回のSBSTTAでは、報告書(UNEP/CBD/SBSTTA/16/8)を元に、REDD+の適用に関するCOP11における決議案をまとめることになります。
5.2 気候変動関連の活動に、生物多様性の配慮に関する事項を統合すること(知識と情報のギャップに対処することを含む)
COP10決議(X/20、X33)では、RIO3条約の協力の推進を求め、生物多様性の配慮を気候変動に関係する諸行動に組み込むための手法などについて、条約事務局にまとめるよう求めました。条約事務局が用意する文書(UNEP/CBD/SBSTTA/16/9)には、生物多様性の配慮を気候変動に関係する諸行動に組み込む際の障害に対処するための行動、気候変動が生物多様性にもたらす影響に関する知識や情報のギャップに対応するための手法、国内能力自己評価キット(NCSAs)の更新に関する提案がまとめられており、この文書をベースにCOP11における決議案をまとめることになります。
5.3 地球工学(Geo-engineering):生物多様性への影響と既存の規制メカニズムのギャップ
COP10決議(X/33)では、地球工学に関する決議を採択し、地球工学が生物多様性や関連する社会・経済・文化にもたらしうる影響や、気候変動関連の地球工学に関する定義や理解について、先住民地域共同体や他の利害関係者の視点・経験をまとめること、気候変動関連の地球工学を規制する既存のメカニズムのギャップについての研究を条約事務局が行いSBSTTAで検討することを求めました。この決議に基づき条約事務局がまとめた文書(UNEP/CBD/SBSTTA/16/10)をベースとし、COP11における決議案をまとめることになります。
6 世界植物保全戦略:決議X/17の実施における進展
COP10決議(X/17)では、改定世界植物保全戦略(GSPC 2011-2020)を採択し、戦略計画に沿った形で、GSPCの解説・マイルストーン(行程表)・指標を開発することを求めました。文書(UNEP/CBD/SBSTTA/16/11)をベースとして、COP11における決議案をまとめることになります。
7 グローバル分類学イニシアティブ:包括的なキャパシティ·ビルディング戦略
COP10決議(X/39)では、包括的な世界分類学イニシアティブのための能力開発戦略を立案するよう条約事務局に指示しました。前回のSBSTTA15では、能力開発戦略に関するコメントを踏まえ、さらなる精査を条約事務局に指示し、SBSTTA16でとりまとめることとしています。SBSTTA16では、この世界分類学イニシアティブのための能力開発戦略の検討と、最終文案作成を行うことになります。
8 新規の緊急課題
COP9の決議(IX/29)で、新規の緊急の課題にCBDが取り組んでいく際の手続きをまとめた。COP10の決議(X/13)では特に新しい課題の追加はないという合意に至ったが、構成生物(Synthetic Biology)と地球工学に関する関係団体からの情報提供と、事務局に対して地表オゾン(ground-level ozone)についての情報収集を求めました。これらの諸活動について、事務局がまとめた文書(UNEP/CBD/SBSTTA/16/13)を元に、COP11における決議案をまとめることになります。
9 バイオ燃料と生物多様性:決議X/37の実施における進展
COP10決議(X/37 11-14段落)では、バイオ燃料の生産や利用が与える直接的間接的な生物多様性への効果や影響を評価する既存の基準や手法についての情報、他の燃料と比較(生成から利用までの全サイクルを含む)、社会経済的な状況への影響などについて情報のまとめ、そのような情報が手に入るかどうかというギャップ、現在進行している活動について、事務局にまとめさせ、SBSTTAに報告することを求めました。上記の活動についてとりまとめました事務局の報告(UNEP/CBD/SBSTTA/16/14)をもとに、COP11における決議案をまとめることになります。
10 誘導措置:決議X/44の実施における進展
COP10決議(X/44)では、締約国その他関係諸団体に対し、生物多様性に悪影響を持つ奨励策(Incentive)の撤廃や改正、好影響を持つ奨励策の促進、生物多様性や生態系サービスの価値の評価についての情報提供を求めるとともに、SBSTTAでの検証のため、条約事務局に対し、それらの情報のとりまとめを指示しました。条約事務局は、これに関する文書(UNEP/CBD/SBSTTA/16/15)を準備しました。この文書をもとにCOP11における決議案をまとめることになります。
11 農業、森林、健康の分野での共同作業についての報告
COPの決定に基づき農業、森林、厚生分野との共同事業に関して事務局がまとめたレポート(UNEP/CBD/SBSTTA/16/16)を検討します。COP10決議(X/34)では、条約事務局に対して、FAO(食糧農業遺伝子資源に関する委員会を含む)とCBDとの協力に謝意を示すと共に、特に戦略計画・愛知目標や、田んぼやオアシスなどの農業生態系の持続可能な利用を進める第2次合同作業計画の立案や、COP11で検討すべき政策指針をまとめることを要請しました。同様に国連森林フォーラムとの共同事業(X/36 第5段落)や、世界保健機関(WHO)の協働の強化(COP9決議27の第9段落)
(文責 (公財)日本自然保護協会 IUCN-J事務局担当 道家哲平)