【ユースレポート】ユースのポジション紹介

第2回ポスト2020作業部会も終わりに近づいてきました。連日、朝から夜遅くまでポスト2020目標の検討・議論が行われています。

ここでは、ゼロドラフトに対するユースのポジションについてご紹介したいと思います。

GYBN(世界生物多様性ユースネットワーク:Global Youth Biodiversity Network)は、生物多様性の損失を防ぐことを共通の目的とする145ヶ国・668,000名(340団体)から成る国際的なユースのネットワークです(数字は2020年2月現在)。GYBNはユースを18~30歳と定義していますが、30歳を越えるベテランメンバーもいます。

各国にコーディネーターがおり、それぞれの国で個別に検討した内容をGYBNの政策提言チーム(コアメンバー)に送る形で、世界ユースの意見(声)をまとめ、本会議場やコンタクトグループで代表者が発言をしています。
GYBNについては、これまでも、にじゅうまるHPの国際会議レポートにて度々紹介をしてきました。なお、GYBNは2020年に10周年を迎えます。

 

発言するシンガポールユース

発言するネパールのユース

 GYBNは世界中のユースから成るネットワークのため、それぞれの国のユースがそれぞれ細かい主張を通すのではなく、各国から収集した意見を基に、全世界のユースの代表としてのポジションを作成しています。日本ユースもGYBNが事前に回覧した文書にコメントをする形で意見表明を行うと同時に、作成したポジションペーパーを日本の代表団(環境省)に送付することで日本人ユースとしての意見表明を行いました。環境省の方からは、「野心的だね」というコメントをいただきました。

*ゼロドラフトに対する日本人ユース(COND)としてのポジションペーパーはこちら
英語 日本語 (それぞれPDFが開きます)

・ターゲットごとの見解(表)はこちらから(Dropboxのリンクが開きます)

GYBNのポジションの概要

GYBNは、共同議長から事前に提示された「ゼロドラフト」とは異なる構造のポスト2020枠組を提案しています。ゼロドラフトは、2050ビジョン、5つの2030+2050ゴールズ、2030ミッション、2030アクションターゲット(20個)という構造になっていますが、GYBNは、2050ビジョン、2040ミッション、2030ミッション、3つのゴール、アクションターゲット(15個)という構造を提案しています。特徴的なのは、マイルストーンとして、ゼロドラフトにはない「2040ミッション」を提案している点、設定している3つのゴールがゼロドラフトにおける3つのグループ分けとは異なる点、3つのゴールに紐付くターゲットがそれぞれ5つずつある計15個を提案している点です。なお、2030ミッションもゼロドラフトに記載されているものとは異なっています。GYBNの政策提言チームの責任者は事前のミーティングにて「ゼロドラフトは全然野心的ではない」と述べており、実際に本会議上でのオープニングステートメントにおいても「ゼロドラフトからどこへ向かうのか」と参加者に投げかけていました。

GYBNが作成しているポジションペーパーのフライヤー

GYBNが作成しているポジションペーパーのフライヤー

GYBNのポジションペーパー詳細

GYBNは、3つのゴールを、「生命維持システムの完全性」「持続可能な生活を送る社会」「自然と人々の平等」と据えています。ゼロドラフト内でのグループ分けとは異なるものの、要素や内容はゼロドラフトと大きく異なるものではありません。

ゴール1:生命維持システムの完全性

このゴール群には、生態系への脅威の減少や保護地域・自然生息地に関する「生態系の完全性」、遺伝的多様性・野生生物の持続可能な取引などを含む「改善された種の状態および絶滅の阻止」、「侵略的外来種への取り組み」「バイオセーフティー」「生態系に基づく気候変動に対するアプローチ」の5つを設定しています。

ゴール2:持続可能な生活を送る社会

このゴール群には、プラスチックを含む汚染に関連した「全ての汚染の減少」、進捗が十分ではなかった愛知ターゲット3と同内容の「補助金改革」、「消費・生産・廃棄への取り組み」、「セクター間で主流化された持続可能な価値・原則・事例」、「変革的教育(transformative education)」の5つを設定しています。

ゴール3:人と自然の平等

このゴール群には、ABSに関連する「衡平・公正に配分された利益」、「全ての人に保証される自然がもたらすもの」、「世代間公平」、「人権と自然の権利」、「包摂的かつ意義のある参加」の5つを設定しています。

GYBNの主張のプライオリティ

GYBNは世界のユースを代表する立場として、「変革的教育」、「世代間公平」、「人権と自然の権利」、「意義のあるユース参画」を特にユース世代の優先事項として主張しています。特に、「変革的教育」、「世代間公平」、「人権と自然の権利」については、それぞれにサブターゲットを設けるよう提案しており、上記の観点を中心に本会議場やコンタクトグループ内で代表者が発言を行っています。特に「変革的な教育」は、社会変容(Transformative change)に不可欠だとしています。サブターゲットの中には、変革的教育や世代間公平のための資源動員を行う、というものも含まれており、実施の観点も重視したものとなっています。

*GYBNのポジションペーパー全文はこちら(英語、PDFが開きます)

 矢動丸琴子(IUCN-J/ Change Our Next Decade)