SBI1 生物多様性国家戦略を通じた愛知ターゲット実施状況

実施補助機関(SBI)という今回が第1回目会合の初日を迎えました。SBI期間中に、生物多様性条約事務局がカナダ・モントリオールに開設されて20周年を迎えることも相まって、生物多様性条約にとって大事な、歴史的な一日となります。

SBIの初日の様子、カナダ・モントリオール

SBIの様子

 

初日は、愛知ターゲットの実施状況(議題4)というテーマが話合われました。具体的には、生物多様性国家戦略(愛知ターゲット17番:みんなで参加しながら作戦を立て、みんなで実現しよう)の策定・改定状況をまとめつつ、各国の戦略をベースに、愛知ターゲットの実施状況について評価が行われました。

 

生物多様性国家戦略は、生物多様性条約6条(a)に規定される各国が”義務”で作らなければならないもので、184カ国が作成しています。愛知ターゲットの採択後に国家戦略を提出している国(=愛知ターゲットを組み込んだ国)は78カ国(加盟国の40%)と報告されました。また、愛知ターゲットに基づいた国別目標も設定されていることが報告されました。

 

残念ながら、各国の設定した目標を足し合わせても愛知ターゲット達成には届かないとされています。この議題に関する主要な論点は下記の通りです。カッコ()内の国名は把握できた限りのその主張に触れた国名です。

 

効果的で緊急の行動と、全目標に対する意欲的な目標設定が必要である。(ユース、カメルーン、メキシコ、IUCN)

2030アジェンダやパリ協定の採択を追い風に取り組むべき。パリ協定のプロセスで各国が出す削減目標に森林伐採の抑制が入っているにも関わらず、愛知ターゲット(5番:生息地が破壊されるスピードを半分まで抑え0を目指す15番:傷ついた生態系を、15%以上回復させ、気候変動や、砂漠化の問題に貢献する)と結びついていない。

・世界規模でも国内規模でも指標の活用が重要。(スイス、NZ、韓国)

・継続的な資金的支援が必要。(バルバドス、ウガンダ、その他多数)

・NBSAPの設定や更新、国別報告書の際に先住民の完全な参加。それに関係する8(J)、10(c)の活動強化が必要性。(グアテマラ、ノルウェー、NZ、フィリピン、ボリビア)

・名古屋議定書やカルタヘナ議定書と愛知ターゲットを一まとまりで議論し、評価することが重要。(カメルーン)

・Inclusive(包括的) Approachの重要性。生物多様性国家戦略を策定したり評価したりする過程で、多様な主体が参加するプロセスを採用することで、この取り組みへの注目や支援者、策定後のモニタリングへの支援を増やす機会となる。このInclusive approachの更なる改善が重要。(カメルーン、ブラジル、日本)

 

その他にも様々なアイディア、意見が出されていました

・すべてに当てはまる方法(No one size fits approach)がない。(NZ、オーストラリア)

・”policy instrument”とはどういう意味なのかはっきりさせるべき。(エチオピア)

・愛知ターゲットの17に含まれる要素がそれぞれ定義され、分析されていない。(スイス)

国別報告書にはどんな手法を採ったかだけではなく、その経験や直面した課題を共有してはどうか。 (南アフリカ)

 

(公財)日本自然保護協会・IUCN-J事務局長 道家哲平