六日目(26日) 2020GBFの進展

ナイロビ会合最終日の26日は、昨夜未明の交渉のせいもあるのか、13時、16時から本会合を開催しました。

ユースアクション:私たちの未来にかかるブラケットを外して!

ユースアクション:私たちの未来にかかるブラケットを外して!

13時からの会合では、各CGの成果文書としてまとまったCRP(Conference Room Papers)を検証し、細かい修正や、ブラケットのかけ直し、脚注や用語集や、今後つづく議論へのコメントを確認し合いました。似たような記述が重複している(例えば、国際協力に関する記述が、段落6と段落15でほぼ同じ)箇所があるなど、文章としての成熟度はまだ不十分という状況です。

ポスト2020枠組みのナイロビ会合の案は、一進一退と言えるCOP15勧告案をまとめました。数多くのブラケットを残した状態ですが、各国のこだわる点というものが明確になったり、12月のCOP15までにする宿題を明確にしました。

セクションA 背景

多くのブラケットを残しています。

背景(基本認識)で何を書き込むかによって、その後の、目標の記述の強弱が変わります。生物多様性の危機の状況や危機要因などをより具体的に記述するか、さらりと記述するかという点が焦点のように思います。

セクションB 目的

多くのブラケットや代替案を残しています。

大きく目的として、条約の目的達成、国際協力や条約間連携を推進するため、あらゆる政府やあらゆる団体の生物多様性のための行動を惹起するためなどの大まかな方向性の下、ここでも具体的に記述するか、包括的に記述するかが論点となっています。

セクションBbis 基本原則(アプローチ、指針 などとする案も併記)

GBFの実施にあたって、必要な原則を書き込むことになったセクションです。

書き込むべきとする原則としては、「あらゆる政府の参画、あらゆる社会の参画、高い政治的意思、NBSAP(生物多様性国家戦略行動計画)や主流化の重要性、実施の透明性・一貫性・効果、他の条約・国際機関・仕組みとの連動、人権ベースアプローチ、多様な価値観の尊重、ジェンダー公正や女性のエンパワメント、世代間公正や教育、先住民地域共同体の役割の認識や、権利、先住民地域共同体の知識の活用における事前の同意、条約だけでなく議定書(名古屋議定書、遺伝子組み換えに関するカルタヘナ議定書)間の調和、パリ協定や国連海洋の10年・ワンヘルスアプローチの組み込み、科学や技術革新、情報そして知識に対する予防的アプローチ、自然に根差した解決策、社会変革や革新・分野を超えた教育や教育へのアクセス、実施のための手段や資源の確保や共有」があり、これらを文章化するのが課題となっています。

セクションC 2030アジェンダとの関係

1段落だけの記述でクリーンテキストになっています。

セクションD 変化の理論

このGBFが、2050年ビジョンに向けた一連の変化が、どのように論理的につながっているかということを紹介するセクションです。一連の変化の中で、基本原則に触れる箇所があるのですが、Bbisの記述と重複しそうな文言が数多く入ってしまい、その整理が課題になっています。

セクションE 2050ビジョンと2030ミッション

2050ビジョン(将来像)はCOP10を踏襲しますが、ミッション(使命)は5案が生まれています。案はそれほどの違いはないように思いますが、Nature Positiveというキーワードを入れる、回復・再生の書きぶりをどうするかで複数案があるといった状況で、対立というほどの違いはありません

セクションF ゴールとマイルストーン

ゴールA

主に生物多様性の危機への対処を示す行動目標1~8中心に行動を起こしながら、2050年にどういう状態に持っていきたいかを示すゴールA(生物多様性条約3つの目的の内の保全に関する総合目標と捉えるとわかりやすいかもしれません)についても、多くのブラケットを残す形で、終わりました。ゴールAは、生物多様性の3つのレベルである「生態系・生物種・遺伝子」ごとに記述が検討されました。

大きな方向性として、数的要素を入れるか(オプション1)、シンプルで定性的な目標の記述(オプション2)を取るかという選択肢が示されています。

その上で主要な論点は、

・生態系レベルでは、完全性、連結性、レジリエンスを2050年までに高める方向性の中で、生態系に、「あらゆる」「脆弱で危機にある自然の」といった形容詞を付けるかどうかという範囲、ベースラインの設定、崩壊のリスクある生態系に焦点を当てた目標設定をするか、等があります。
・生物種レベルでは、絶滅の回避または半減、個体数の増加の方向性の中で、再び「あらゆる」「知られた」「絶滅の危機にある」「人為の影響を受けた」といった種にかかる形容詞の指定、個体数増加を目指す対象種(「野生生物種」「家畜」「固有種」「あらゆる種」)の検討などがあります。
・遺伝的レベルでは、遺伝的多様性の確保の方向性の中で、生物種と同様に対象とする種(形容詞)でわかれています。
・また、それぞれ、2050年までと、2030年までの数値目標の書き分けをするかどうかが、数的要素を入れるオプション1では課題となっています

ゴールB

持続可能な利用という条約の3つの目標の一つに関する2050年目標になりますが、数多くのブラケットを残しています。

保全や持続可能な利用によってもたらされる生態系サービスや生態系機能に関する目標を示す目標です。
SDGsとの関係、清浄な空気を得る権利(環境権に関する国連決議)、生態系フットプリントや、プラネタリーバウンダリ―の概念の導入の可否などが焦点となっています。

ゴールC

利益配分という条約の3つの目標のひとつに関する2050年目標になりますが、多くのブラケットが残っています。

どんな利益を共有するか、増加の書きぶり、DSIの言及などにブラケットがかかっていますが、協議も十分にできていないような印象を受けます

ゴールD

実施の手段に関する2050年の方向性を定めるものです。「GBFの実施の手段を整える」というあっさりした書きぶりと、数値目標や手段の内容を具体化する記述とするかで分かれていて、合意まで程遠い印象です。

行動目標1~3 空間計画/再生/保護・保全地域の拡充

空間計画・再生・保護地域拡充の取組みを、エリアを対象とするか、生態系を対象とするかという用語の整理がコンセンサスを得られず、モントリオールの交渉に持ち越すこととなりました。

数値目標の持ち方も、割合(%)で行くか、絶対値(10億ヘクタール)で行くかもまとまらず、多くのブラケットが残っています。

行動目標4 生物種

生物種の保全や、生物種との衝突回避を目標とするものですが、全くまとまっておらず、多くのブラケットを残しています

行動目標5 過剰利用

過剰利用というIPBESの特定する危機要因への対処を定める行動目標ですが、入れたいという要素がちりばめられた案と、シンプル化した案の2案が併記される形で、ほとんど、解決されていない文案のように思います。

主な論点

・過剰利用対策の対象となる種の書き方:野生生物/野生動物/植物/卵など部分も記述するか
・利用の記述の形:捕獲・漁獲・貿易・利用等
・病原の逸出(スピルオーバー)といった要素を入れるか、

行動目標6 外来種

外来種というIPBESの特定する危機要因への対処を定める行動目標ですが、入れたいという要素がちりばめられた案と、シンプル化した案の2案が併記される形で、ほとんど、解決されていない文案のように思います。

主要論点

・外来種侵入経路対策の記述の仕方
・数的目標の設定の仕方
・侵入した種の管理や撲滅(Eradication)に関する対象種の範囲(全てvs優先度の高い)記述や目標設定

行動目標7 汚染

参照:http://bd20.jp/2022-06-22/

行動目標8 気候変動

参照:http://bd20.jp/2022-06-23-2/

行動目標9 自然の恵み

参照:http://bd20.jp/2022-06-24-01/

行動目標10 第1次産業or生産の場

参照:http://bd20.jp/2022-06-24-01/

行動目標11 調整サービスの確保

生態系サービスの内調整サービス(空気や水、ポリネーション、自然災害からの保護)の再生や維持や強化についての行動目標はほとんどまとまりました。

課題としては、サービスの記述の中に欧州が進める「土壌の健全性」を入れるか、2つ掲載されている行動目標達成手段「自然に根差した解決策」「生態系サービス支払い」の扱いが課題に残っています。

原案を仮訳すると、
「すべての人々と自然の利益のために、[特にこれらのサービスを提供する上で最も重要な場所において] [環境サービスに対する支払いによって] [自然に根差した解決策と生態系ベースのアプローチ]により、空気や水の調節、[土壌の健康]、受粉、[気候]、自然災害からの保護などの生態系機能とサービスを含む自然による人間への貢献を回復、維持、強化する」
となります。

行動目標12 緑地や親水地の確保

唯一まとまった目標です。

仮訳は下記の通りです。
「生物多様性の保全と持続可能な利用を主流化し、生物多様性を含む都市計画を確保し、固有の生物多様性、生態系の連結性と完全性を高め、人間の健康と福祉、自然とのつながりを改善し、包括的で持続可能な都市化と生態系機能とサービスの提供に貢献することにより、都市と人口密集地域における緑と青の空間の面積と質、連結性、アクセス、利益を持続的に大幅に増加させる」

行動目標13 ABS

ABSの推進に関する行動目標ですが、推進の書き方や目標の対象範囲の記述の仕方、手段としての、DSIや能力養成、配慮事項としての先住民地域共同体に関する記述など、数多くのブラケットを残しています。

行動目標14 政策への主流化

おおよその修正作業が終わっている印象です。

コンタクトグループを通じて、冗長だったり、不要な表現などを削除、生物多様性の[多様な]価値を反映、全(all)政策に組み込むという表記の、現実性や本当に必要かなど、懸念の声と強く支持する声がありました。

ここでは、「農業や林業、漁業、養殖業、金融、観光、健康、製造、インフラ、エネルギー、鉱工業、深海底掘削」といった主流化が必要なセクターの具体的な記述方法が、残った論点のように思います。

行動目標15 企業への主流化

参照:http://bd20.jp/2022-06-25-01/

行動目標16 市民の主流化

消費などのライフスタイルにおける生物多様性の主流化、数的要素の扱いでまた意見集約が成されていません。特に数値目標は、フットプリント、廃棄の減少、一人当たり食料廃棄量の減少、自然資源の過剰消費、等の言葉が定まっていません。これは、指標とも連動する課題と思います。

行動目標17 バイオテクノロジー

カルタヘナ議定書(遺伝子組み換え生物)に関係する技術を射程とするか、ジーンドライブ含む、新規のバイオテクノロジーを射程とするか、バイオテクノロジーをポジティブに評価した技術を入れるかどうかなど、作業が数多く残っている目標です。

行動目標18 奨励措置

参照:http://bd20.jp/2022-06-23-2/

行動目標19.1 資源動員

資金的な資源を拡充する19.1の議論は、1ページ近い目標となり、もはや行動目標ではなく、資源動員戦略の目標の章、といった様相を呈しています。

論点は、あまり変わっておらず、資源動員は、先進国の役割(条約20条)か全締約国の義務か、という大きな隔たりの元、生物多様性の為の資金総額の向上(数値目標設定の是非)、追加的な資金の確保と活用、民間の資金の活用、国内での資源動員、新たな資金メカニズム、気候基金の活用、革新的な資金メカニズム(生態系支払、グリーンボンド、生物多様性オフセット、ABS基金、DSI、カーボンクレジット、コンサベーションスワップ)の惹起等の要素が、ブラケットだらけで文章化(と言えるかどうか)されています。

行動目標19.2 資金以外の資源動員

資源動員の内、資金に関わらない本目標案は、クリーンテキストになりました。

仮訳すると、下記となります
「特に途上国において、効果的な実施のためのニーズを満たすために、南-南、北-南、三角協力を含む、能力開発と開発、技術・科学協力へのアクセスを促進し、生物多様性の保全と持続可能な利用のための共同技術開発および共同科学研究プログラムを育成し、枠組みの目標と野心に見合った科学研究およびモニタリング能力を強化する」

行動目標20~22

参照:http://bd20.jp/2022-06-22/

セクションH~Kは、意見出しを行い、内容の更新を行いましたが、更新後の文章は、交渉されていません。

セクションH(実施と支援メカニズム)

セクションHは、実施手段をまとめたものですが、[ ]は全体にかかっているので、綺麗にまとまっているように一見感じますが、残念ながらそれは誤りです。

現在実施手段として、議論の遡上に載っているものは、「資源動員、能力養成、科学技術協力と移転、知識管理、ジェンダーレスポンシブ実施、主流化、条約下にある作業プログラム、国家戦略や地域戦略」などです。その中で、新たな仕組みとして、主に途上国から提案されているものとしては、①新たな資金メカニズム、②DSI利益配分メカニズム、③グローバル科学技術協力支援センター含む科学技術協力支援メカニズム、④8条(j)項作業継続のための仕組み、⑤教育や知識の共有の促進に関するメカニズムです

他方、Bbisなどの記述との重複も多くあるセクション文案になっています

セクションI 条件整備

内容のほとんどをBbisに移動させるという整理が予定されているセクションですが、一旦、ファーストドラフトの記述を残すことにしました。

セクションJ 責任と透明性

本セクションは、2030年までのCOPで何を行うかということが検討されました。

生物多様性国家戦略の策定、国別報告書、各国の策定状況の共有、各国が設定した目標を共有するための標準化、設定した目標の集約と分析と更なる行動の検証と追加行動の呼びかけ、非政府アクターの寄与の扱い、などを2030年までのどのタイミングでどう実施するか、意見の隔たりは大きいながらも、検討されたことは前進と言えます。

セクションK コミュニケーション、教育、普及、理解向上(Uptake)

セクションKは、生物多様性に関するコミュニケーション、教育、啓発を強化し、すべての主体がこのフレームワークを取り込むことが、その効果的な実施と行動変容を達成し、持続可能なライフスタイルを支援し、生物多様性の価値を制度化するために不可欠であるとして、7つの普及啓発や教育、コミュニケーションなどを定めています。

*GBFのコミュニケーション戦略は別途SBIで案をまとめています。
http://bd20.jp/2022-03-28-01/

(公財)日本自然保護協会・国際自然保護連合日本委員会

道家哲平